不思議な構造

 今日からようやく涼しくなってきたようですねー。季節の移り変わりを感じてしまいます。

 私は暑いのが元々苦手で、その上ホールド製造の作業効率もガタ落ちなので、涼しくなってきてホッとしています。

 ところで年間何件かある問い合わせがありまして。

 それは、
自宅の壁にクライミングウォールを作るが、ウォールと壁の間に隙間がない構造なので、同梱ボルトの長さを教えてほしい
 というものです。ここで、いやいやちょっと待ってくださいよ…。となるわけです。

 この、ウォールと壁の間に隙間がない、というのは、クライミングウォールを作るときには普通あり得ないものなんです。その理由を以下に書きます。

 まず前提として、安全にクライミングをするためには、

 ナット内部のネジ山とホールド固定用のボルトのネジ山は、全て噛んでいる必要があります

 一般的に使われているM10爪付きナットの寸法では、 ネジ 山部の長は約11mmです。これがボルトのネジ山全てと噛んでいる必要があるわけです。

 ホールドメーカーの想定している利用状況は、上記のはずです。例えばナットとボルトは5mm噛んでりゃいいよ、なんて言っているメーカーは私の知る限り、無いです。営業ジムでもそんなところは無いですし、あってもそんな浅く噛んでいるホールドに体重をかけて登れますか?お子さんに登らせられますか?って話ですよね。ランジなんかしたら、ホールド固定用のボルトには体重の何倍もの力がかかるわけですよ。あり得ないですね。まぁそこまで想像しなくてもね。分かるとは思いますが。

 それから、クライミングホールドのボルト部深さに規定はありません。世界中のメーカーのホールドを見てますが、それは無段階にあります。
 薄い小さいホールドだと5mmくらいの深さからありますし、大きいホールドだと200mm以上の深さもありますね。こんな感じで、ボルト穴の深さは無段階に存在するわけです。

 で、市販されているボルトの長さは5mm単位 です。

 お分かりいただけるでしょうか。

 何十個もホールドを設置する時に、ボルトとナットのネジ山を全てイコールにする事は 事実上不可能
 従って、 クライミングウォールと壁の間に隙間がない構造はNG。

 そりゃそうです。営業ジムでそんな壁は無いんです。そんな構造の壁ついて、素人さんが増し締めなどのメンテを完璧にできますか?高所作業であることもあると思いますし。
 ホールドの扱いに慣れていないご家庭でのご利用をされる方にほど、少しでも安全に使える構造を提案するべきです。緩衝マットの設置が十分な営業ジムでもやっていない、こんな構造のクライミングウォールを勧める業者は、私は無責任だと思います。

# 先日こういったべた付けのボートを販売している業者の方とお話しさせていただく機会がありましたが、 クライミング未経験者 との事でした。
# 利用者(=お客さん)の安全性をないがしろにして良く売れるなぁと思います…。

 ボルトとナットのネジ山を全て噛ませるという前提で、ホールド毎に最も適した長さのボルトを用意したとしても、最大4mm(正確には5mm未満と書くべきですが)は、ボルトの先端が壁の向こう側に出ることになります。そのための空間が必要です。

  以上簡単な説明でしたが、ウォールと壁の間に隙間を設ける必要があるのがお分かりいただけましたでしょうか?

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